「選任」と「選定」の違いについて解説します。
「選任」と「選定」の違い
「選任」と「選定」なんて同じ意味でしょ、と思いそうですが。会社法はこの2つの用語を使い分けています。
会社法上「選任」は、特定の者を特定の地位に選ぶこといいます。一方、「選定」はすでに一定の地位にある者中から特定の地位に選ぶことをことをいいます。
会社法329条は
「役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。」
と規定しているのに対して、362条3項では
「取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。」
と規定しています。取締役は誰からでも選ぶことができる*1ので「選任」という言葉を使っている一方、代表取締役は「取締役の中から」というように一定の地位にあるものから選ぶ必要があるので「選定」という言葉を使っているようです。
また、取締役会は取締役の中から業務執行する取締役を選びますが、その場合も「選定」という言葉を使っています。
363条1項2号
「解任」と「解職」の違い
「解任」と「解職」についても、会社法は使い分けています。
会社法上「解任」とは、一定の地位を解くことをいいます。一方、「解職」とは一定の付加的的な地位を解くことなので、その付加的な地位が解かれてもその基となる基礎的な地位はそのままになります。
会社法339条1項は
「役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。」
と規定しているのに対して、362条2項3号で取締役会の職務として「代表取締役の選定及び解職」を規定しています。
取締役の解任はその人の基礎的な地位そのものを解くのに対して、代表取締役の解職に関しては取締役という地位を基に付随している代表取締役という地位を解くので、代表取締役を解職された人にも取締役の地位はそのままになります。
このような違いから、「解任」と「解職」という言葉は使い分けられています。
*1:取締役の選任について 誰からでも選ぶことができると書きましたが、欠格事由に該当しているものは取締役になることはできません。